レッドビーシュリンプ飼育は魚水槽やヌマエビ水槽と比べると飼育にコツが必要です。
このコツを把握していない状態で魚水槽と同じように飼育を開始すると殆どの場合、失敗してしまいます。
筆者もはじめは飼育のコツを十分に把握しておらず、いろいろな失敗を経験しました。
エビ専門店にアドバイスを頂きながら続けていくうちに飼育のノウハウが蓄積し、現在はなんとか安定して飼育繁殖できるようになりました。
当記事では、初心者にありがちな失敗とその対策をまとめています。
1.水槽立ち上げまでの期間が待てない
レッドビーシュリンプ水槽の立ち上げ期間は1〜3ヶ月程度です。
しかし、初心者の方はこの期間を待たず(待てず)にエビを導入してしまうことが多いのです。
初心者の皆様へ、立ち上げ期間の必要性を理解し、納得いただくために詳しく解説していきます。
立ち上げに1〜3ヶ月必要な理由
立ち上げに数ヶ月必要な理由は、水槽内にエビが生息できる環境を整えるためです。
具体的には2つの理由があります。
理由
- 水槽内で発生する悪い物質(アンモニア)を分解するためのバクテリアの定着させるため
- エビの餌になる微生物を繁殖させるため
バクテリア定着と微生物の繁殖がうまく行っていないとエビが徐々に弱っていってしまいます。
バクテリア定着
エビが住める環境を作るために水槽内に硝化バクテリアを定着させなければなりません。
硝化バクテリアは「アンモニアを亜硝酸塩→硝酸塩」の順に分解して弱毒化する働きがあります。
この硝化バクテリアは空気中に存在しているため、自然と水槽内に入り定着していきます。
一つ注意点としては水槽内にアンモニアがないと硝化バクテリアが繁殖しない点です。
ではどのようにアンモニアを発生させるのか?
次のような対応が必要になります。
ポイント
- 栄養系ソイルを使用する
- パイロットフィッシュを入れる
アマゾニアなどの栄養系ソイルを使用した場合は、ソイルから少しずつアンモニアが溶け出し、バクテリアの繁殖を促進してくれます。
プラチナソイルなどの吸着系ソイルを使用する場合は、メダカやアカヒレなどの比較的強い魚を水槽に入れ、餌を与えることでアンモニア(糞)を発生させます。
もし、立ち上げ期間を少しでも短縮させたい場合は、レッドビーシュリンプ水槽の飼育水やソイル、スポンジフィルターの搾り汁などを入れることで大幅に立ち上げ期間を減らすことができます。
2本目以降の水槽立ち上げだとこれができますね。
微生物の繁殖
レッドビーシュリンプを安定して飼育するためには水槽内では糞や死骸が分解されて無毒化するまでの流れ「腐食連鎖」の構築が必要です。
そのためには、エビの糞や食べ残しなどを食べて分解する微生物たちの働きが不可欠です。
これらの微生物をしっかりと水槽内に繁殖させる必要があります。
また、一部の微生物はエビの餌になります。
これらの餌となる微生物たちが少ないとエビはツマツマしなくなります。
バクテリアと同じぐらい大切な存在ですので、しっかり時間をかけて微生物を増やしましょう。
ソイルの種類、厚さによる立ち上げ期間の違い
立ち上げ期間は栄養系、吸着系、厚敷、薄敷によって次のような関係性があります。
立ち上げ期間
- 栄養系(期間長い)>吸着系(期間短い)
- 厚敷(期間長い)>薄敷(期間短い)
さらに言うと、栄養系でも種類によって立ち上げ期間は様々です。
栄養系の代表格であるアマゾニアソイルはかなり長い立ち上げ期間が必要となります。
栄養系の目安期間
- 厚敷(ソイル厚1.5cm以上) 2〜3ヶ月
- 薄敷(ソイル厚1.5cm未満) 1〜2ヶ月
吸着系の目安期間
- ソイル厚に関わらず1ヶ月以上
吸着系の場合、エビはすぐに入れられます。
しかし、短期間の場合、本当の意味で立ち上がっていないことがほとんどです。
吸着系で起こるソイルブレイクの恐怖
吸着系はアンモニアなどの悪い物質をソイル自体が吸着し無毒化します。そのためバクテリアの定着や微生物の繁殖が十分行えていないにもかかわらずエビは問題ないと言う状態が発生します。
しかし、ずっと問題ない状態が継続するわけではありません。
ソイルの吸着量が上限に達した段階で「ソイルブレイク」と言う現象が起こります。
ソイルブレイクとは今まで吸着していた有害な物質が逆に水槽に放出される現象です。
ソイルブレイクに適切に対応しなければエビは一気に元気がなくなります。
この現象を乗り越えてようやく安定したエビの飼育が可能となります。
実はエビ飼育において吸着系のコントロールは難しいのです。
栄養系はソイルブレイクも無い(立ち上げ時点で終了している)ので初心者にも安心です。
2.立ち上がりを判断出来ない
初心者の方は亜硝酸塩や硝酸塩の検査試薬で水槽が立ち上がったかどうかを判断するケース多く見られます。
実際に試薬だけで立ち上がりが判断できるかというと…
試薬での確認は有効ですが、それだけでは不十分です。
試薬だけでなく、水槽内の変化をしっかりと観察し判断する必要があります。
特に初心者の方にとっては、この判断が難しいので立ち上げにはしっかりと期間をかける必要があります。
①亜硝酸塩検査薬による判断
水槽内で発生したアンモニアは硝化バクテリアのチカラにより、亜硝酸塩⇒硝酸塩の順に分解されていきます。
硝化バクテリアの定着を確認するためには亜硝酸塩(NO2)の検査試薬を使用します。
亜硝酸検査試薬の使用において注意点があります。
立ち上げ数日で検査しても、亜硝酸塩が検出されません。
なぜなら、アンモニアがまだ亜硝酸に分解されていないからです。
亜硝酸の検出は時間とともに以下のような経過をたどります。
経過
- 立ち上げ1週目は変化なし
- 立ち上げ2週目から亜硝酸が検出され始める
- 立ち上げ4週目以降亜硝酸が減少し最終的にゼロになる(徐々に硝酸塩が検出され始める)
ポイントとしては一度亜硝酸が検出された後、数週間後に亜硝酸が検出されなくなったことを確認することです。
硝化バクテリアの定着を確認する上で大変重要な作業ですが、これだけでは立ち上がりの判断には不十分です。
②水槽内の苔・微生物・水草による判断
バクテリアの定着状況や微生物の発生状況を確認するには、水槽内の環境をよく観察することが重要です。
苔による立ち上がり判断
苔は亜硝酸検査薬と同様にバクテリアの定着状況を確認する指標となります。
立ち上げからの時間経過とともに「茶苔が発生⇒茶苔が消え、緑苔が発生」という変化が起こります。
緑苔が出てきたらバクテリアが定着してきたと判断できます。
解説
立ち上げから2週間〜3週間すると茶苔といわれる茶色いコケが発生します。
茶苔は水槽内の亜硝酸塩を栄養として成長するため、この苔が見え始めたらアンモニアが分解されて亜硝酸塩が出てきたなと判断出来ます。
次に茶苔が徐々に消えていき、緑苔と言われる緑色の苔が水槽のガラス面に現れ始めます。
緑苔は硝酸塩が発生している判断となります。
微生物による立ち上がり判断
エビ水槽の立ち上げにはバクテリア定着の他に、微生物の繁殖も重要です。
特に注目するべき微生物は「ケンミジンコ」です。
バクテリアが定着し、ある程度水槽内のバランスが整い始めるとケンミジンコが湧いてきます。
なぜこのケンミジンコが湧いていることが立ち上がりの判断になるのかというと…
ケンミジンコはエビと同じ微生物を餌として捕食します。
つまり、ケンミジンコがたくさん湧いているとエビの餌となる微生物が沢山繁殖しているということになるのです。
ポイントとしてはケンミジンコが湧き、元気に動いている状態を確認することです。
水草による立ち上がり判断
水草の状態によっても立ち上がりの判断が出来ます。
具体的には、水草の葉や根がきれいな状態で、成長が見られるかどうかをチェックします。
◆アマゾンフロッグピット(浮草)
亜硝酸や硝酸塩が多く水槽内の状態が悪いと根が茶色にボワついてきます。
逆に水槽内の環境が良いと白透明なキレイな根が生えてきます。
また葉も調子が良いとキレイな緑色ですが、水槽内の環境が悪かったり栄養が不足していると黄色や茶色の葉になってきます。
立ち上げ時は特に根の状態がキレイになってきたかどうかを判断基準としてください。
◆ウィローモス
モスも浮草の葉と同様にキレイな緑色かを判断基準としてください。
また、バクテリアが定着すると新芽が出てきて急激に成長を始めます。
このあたりもポイントとして把握しておきましょう。
③テストシュリンプによる判断
最も確実に立ち上がりを判断する方法としては「テストシュリンプを数匹水槽に入れてみる」という方法です。
複数のレッドビーシュリンプ水槽を管理している人の殆どが行っている方法かと思います。
目安となる立ち上げ期間経過後、苔や微生物の発生状況を確認した後にテストシュリンプを導入して1週間ほど様子を見てみましょう。
テストシュリンプには何を入れる?
テストシュリンプとしてよく用いられるのはヤマトヌマエビやレッドビーシュリンプです。
ヤマトヌマエビは比較的丈夫ですので、ある程度環境が整っていなくてもお星さまになることは少ないです。
テストとして様子を見ながら、水槽内の環境を整える事もできるのでおすすめです。
ヤマトを用いる場合の注意点
ヤマトヌマエビは中性〜弱アルカリ性の環境が適しているので、弱酸性環境に弱いという点です。
一般的にソイルで水槽を立ち上げるとソイルのイオン交換効果で水槽内のPHは弱酸性に傾きます。
特に立ち上げ初期はかなり酸性側に傾くため、ヤマトヌマエビの動きが鈍くなる傾向があります。
これを頭に入れていないと水槽内でなにか異常が起こっているのではないかと不安になってしまいます。
一番確実なのはレッドビーシュリンプをテストシュリンプとして使うことです。
レッドビーシュリンプについてはPH6弱でも普通に活動します。
初心者の方でわざわざテストシュリンプを用意するのが難しいと言う場合は、レッドビーシュリンプを少ない匹数から導入することをおすすめします。
具体的には初回導入は5匹〜10匹だと個人的には考えています。
環境に問題がないことを確認出来たら徐々に増やしていけばよいのです。
3.レッドビーシュリンプ飼育に適した水を使っていない
実はレッドビーシュリンプ飼育において自宅の蛇口から出る水の水質が一番の課題かもしれません。
なぜなら、お住まいの地域の水によってレッドビーシュリンプ飼育の難易度が大きく変わるためです。
地域の水道水の水質がレッドビーシュリンプ飼育に適していない
お住まいの地域によって水道水の水質が異なります。
ミネラルが多く含まれている硬水の地域や、ミネラルがほとんど含まれていない軟水の地域があります。
どちらがレッドビーシュリンプ飼育に有利かと言うと軟水の地域です。
硬水の地域の場合、安定して飼育繁殖するのは正直かなり難しいです。
硬水での飼育が難しい理由
硬水の地域はエビに必要な「カルシウムやマグネシウム」の他に、様々な不純物が水の中に溶けています。
レッドビーシュリンプは繊細なエビなので、これらの不純物により影響を受け弱ってしまうことがあります。
逆に軟水の場合、「カルシウムやマグネシウム」はほとんど入っていませんが、不純物も入っていません。
この場合必要な量のカルシウムやマグネシウムを水に加えることでエビにとって心地よい水が出来上がります。
どうしても上手く飼育できない場合は、RO浄水器を使用すると問題解決出来ます。
カルキ抜き剤を使用している
レッドビーシュリンプは非常に繊細なエビです。
可能な限り水槽内に不純物を入れないと言う考えが大切です。
そのため、カルキ剤ではなく、アクアリウム用浄水器を用いてカルキを抜くのが無難です。
解説
カルキ抜き剤の成分「チオ硫酸ナトリウム」が水と塩素と反応し…塩化水素(塩酸)と硫化水素(硫酸)が発生します。
この新たに発生した成分は、ごくごく微量なため、ほぼ魚飼育において影響が無いと言われています。(もちろんPHを低下させることもありません)
しかし、繊細なレッドビーシュリンプには少なからず影響があると考えたほうが良いかと思います。
反応式は以下のとおりです。
4Cl2+5H2O+Na2S2O3 → 8HCl+H2SO4 +Na2SO4
[塩素] [水] [チオ硫酸Na] [塩酸] [硫酸] [硫酸Na]
ミネラル剤を必要量添加していない
エビなどの甲殻類は殻を作るためにカルシウムやマグネシウムが必要となります。
飼育水の中に必要分のカルシウムやマグネシウムがないと脱皮不全が起こるリスクが高まります。
そこで、一定量のミネラル剤の添加が必要となります。
水作りに関する詳しい内容は「RO水は必須!?レッドビーシュリンプに最適な飼育水とは?」で解説しています。
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4.餌をあげすぎる
エビは飼育者が与える餌だけを食べて生きているわけではありません。
水槽内に発生する目に見えないほどの微生物を捕食して成長しています。
初心者がレッドビーシュリンプの飼育を開始して一番最初につまずくぽポイントが餌やりです。
餌を食べている可愛い姿を見たくてついつい餌をあげすぎてしまいます。
エビが食べ切れない餌が水槽内に残ると、水槽内の腐食連鎖のバランスが崩れてしまい、有機物が蓄積してしまいます。
結果、エビが徐々にツマツマしなくなり、物陰に隠れてしまいます。
餌やりに関する詳しい内容は「【実体験あり】レッドビーシュリンプが調子を崩さない餌の量と頻度を解説!」で解説しています。
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【実体験あり】レッドビーシュリンプが調子を崩さない餌の量と頻度を解説!
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5.水換えの頻度と量が多すぎる
良かれと思って頻繁に換水しているとエビの調子が崩れることがあります。
どの程度で多いかというと、「週1回 水量の1/4〜1/3」でも多すぎます。
水換えのメリット・デメリット
水換えは水槽内に溜まった硝酸塩を排出し、きれいな水に入れ替えるための大切な作業です。
その一方で、水換えにより水質が変化するためエビたちに少なからず負担がかかります。
このように水換えにはメリットとデメリットがあります。
そのため、水換えの量と頻度のバランスが非常に大切になります。
飼育しているエビの数や餌の量にもよりますが、目安としては7〜10日に1回、水量の1/6〜1/10を換水する程度で問題ありません。
6.購入したエビの状態が悪い
エビ飼育に失敗する原因として意外と見落としがちなのが、そもそも購入したエビの品質が悪いケースです。
ヤフオクなどの場合、出品者がどのような飼育環境でどのような累代管理を行なっているかわからないケースが多々あるため初心者の購入先としては注意が必要です。
そもそもエビが弱っている
一部のホームセンターなどで飼育環境が悪く、既に弱っていることもあります。
エビが元気に動き回っているか観察してから購入した方が良いです。
アクアリウムショップでもエビ専門店出ない場合、魚と混泳していたり、状態が良くないケースも見受けられます。
単独飼育されているか?影に隠れていないかをチェックしてから購入しましょう。
血が詰まっている
色や柄を追い求めるあまりに少数のエビで近親交配を繰り返すことで「血の詰まり」が起こります。
血の詰まりとは?
少数のエビで近親交配を繰り返すことで、本来淘汰されるはずの遺伝的に弱いエビが発生することを言います。
具体的には繁殖しにくい個体や、死にやすい個体、奇形などが発生します。
一定以上の数でエビを飼育し累代繁殖していれば特に問題は起こりません。
以下のような繁殖方法を繰り返していると徐々に血が詰まってきます。
- 1ペアや2ペアなど少数で繁殖させる
- 親と子を掛け合わせる
血の詰まりを防ぐためには、世代ごとに水槽を分け、ある程度の数で繁殖を繰り返すなどの管理が必要となります。
しっかりと管理されている知識ある専門店やブリーダーの方からの購入が重要になります。
輸送時のストレスや温度
エビにとって負担が大きいのは通販の際の輸送ストレスです。
たとえ死着がなかったとしても、エビに温度変化によるストレスがかかっています。
ほとんどの業者さんは夏は保冷剤、冬はホッカイロを同梱し温度変化を最小限にしてくれてます。
それでも真夏や真冬の購入はリスクが伴います。
レッドビーシュリンプの適温は25度前後で、生存温度は18度〜29度です。
特に高温はエビに負担が大きいので、真夏の通販での購入は避けたほうが無難です。
おすすめのレッドビーシュリンプの購入先
おすすめ順は以下の通りです。
ポイント
- 専門店で直接購入
- 専門店でネット通販(ヤフオク含む)
- アクアリウムショップ
- ホームセンター
まとめ
記事が長くなってしまいましたので、振り返りをしましょう。
ポイント
- 立ち上げまでの数ヶ月は我慢して待ちましょう!
- 立ち上がりは試薬だけで判断したらダメ!絶対!
- 住んでいる地域の水質を把握して対策しよう!
- 餌のあげすぎは要注意!
- 水換えは7~10日に1回、水量の1/6~1/10を!
- 元気なエビは専門店で購入しよう!
これらの内容を頭に入れておくだけで、レッドビーシュリンプ飼育の成功率はぐっと上がります。