レッドビーシュリンプを安定して飼育・繁殖させるためには飼育水の水質が非常に重要です。そして、その元となる水質は現在住んでいる地域の水道水により様々なのです。
特に気にせず安定して飼育・繁殖出来る地域もあれば、苦労して水質を管理することで飼育・繁殖出来る地域もあるんです。
RO水が必須か!?という疑問に対する答えは、住んでいる地域の水質に次第です。
レッドビーシュリンプを飼育している方の中には、この水質について悩まれている方が多いのではないかと思います。
当記事はレッドビーシュリンプを飼育するための水作りについて詳しく解説していきます。
レッドビーシュリンプの飼育に適した水質とは?
レッドビーシュリンプに適した水質は数値でいうと次の通りです。
レッドビーに適した水質
- PH:7以下
- GH(硬度):4前後
※水温は20〜25℃、残留塩素0など最低限の条件はクリアできている水を前提として説明していきます。
これだけ見ると非常にシンプルなのですが、実際に飼育してみると、数値は問題ないのにエビがポツポツと☆になることがあります。
レッドビーシュリンプに適したPH
一般的にPH6〜6.5が適すると言われています。
ですが、実際に専門店から購入した際の袋の水のPHを測定してみたところ、かなりばらつきがありました。
もちろん、それぞれの専門店のエビは非常に元気で水槽導入後も順調に増えてくれるエビばかりでした。
具体的にどの程度のバラツキがあったかというと…
以下の通りです。
購入補 | エビの種類 | PH |
専門店A | レッドビーシュリンプ | 5.5 |
専門店B | レッドビーシュリンプ | 7.5 |
専門店C | 黒フィッシュボーン | 7 |
専門店D | 黒フィッシュボーン | 7 |
専門店E | タイガービー | 5 |
中には、PH7.5で活き活きと動いているレッドビーもいます。
その他の袋の水はPH5〜6.5の範囲でした。
アマゾニアなどの栄養系ソイルで水槽を管理している場合はそれほどPHを気にする必要はありません。(筆者は日常管理においてPHをほとんど測っていません。)
注意点としては、無理やりPHを動かそうとして水槽内に色々な添加物を入れないこと。添加剤で無理やりPHを調整するとエビの調子を崩す可能性があります。
ちょっと一言
一般に水道水のPHは7前後です。これに対し水槽内はPH7以下の弱酸性となっています。これはソイルのイオン交換効果によりPHが酸性に傾けられているからです。
レッドビーシュリンプの換水や足し水は少量のため、PH7前後の水を水槽に入れてもそれほど影響がありませんのでご安心ください。
水道水のPHが高めで気になる方は、変化が少ない点滴法で水槽に水をいれると安心です。
PH測定ツール
※GHもこのテトラ6in1で測定出来ます。
レッドビーシュリンプに適したGH(硬度)
レッドビーシュリンプは甲殻を形成するためにカルシウムやマグネシウムなどを必要としています。
これらのミネラルが無いと脱皮不全などを起こしてしまうため、水中にも一定量含まれていることが望ましいとされています。
レッドビー飼育に必要な硬度
ではレッドビーシュリンプにはどの程度の量が必要か?…というと、硬度4°d前後を目安としています。
硬度とは
水1L中に含まれるカルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)の総量を表しています。
アメリカ、ドイツなどにより数値の単位が異なるのですが、アクアリウムにおいては、ドイツ硬度(°d)で表わされます。
硬度1°d=17.8 mg/L。つまり1L中に合計17.8mgのCa2+、Mg2+が入っていることになります。
ミネラル添加の目安TDS
ちなみに、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを添加するときには、硬度ではなくTDSという数値がよく用いられます。
このTDSは水中に溶けてイオン化する物質全ての量を表しているため、カルシウムやマグネシウムを表す硬度よりも更にざっくりとした値です。
なぜ、より正確に測れる硬度ではなく、TDSが用いられているかというと…
測定が簡単かつ測定器が安価だからです。
硬度は試薬を使わなければなりませんが、TDSは測定器を水につけるだけですぐに結果が確認出来るんです。
水道水のTDSを事前に測定しておき、ミネラル剤を添加しつつTDSを測ることで、おおよその硬度がわかります。
私の家の水道水はTDSが約30ppmです。これにTDSが80〜100になるようにミネラルを添加すると硬度が4°dになります。
TDSとは?
TDSとはTotal Dissolved Solids(総溶解固形物)の略で、水中に溶けてイオン化する電解質の量を表しています。
電解質とは水に溶けることでイオン化する物質のことです。カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、カリウム(K+)ナトリウム(Na+)、塩素(C-l)などが挙げられます。
他にも、アミノ酸も水中でイオン化します。
つまり、TDSはカルシウムやマグネシウム以外のイオン化する物質も含め、全ての電解質の量をざっくりと表しています。
※TDS測定の原理:導電率(電気の通りやすさ)を測ることで水中の電解質(水に溶けるとイオン化する物質)の量を測ることができます。
TDSの測定ツール
非常に研究熱心な社長さんが作っているTDS測定器です。安価で信頼性も高いので、もし導入するならコレ1択です。
(筆者も購入し、毎週水作りの際に使用しています。)
レッドビーシュリンプの飼育と居住地域の水質
レッドビーシュリンプの飼育・繁殖の難易度は地域の水質で決まると言っても過言ではありません。
ポイント
- 軟水地域はレッドビーの飼育が容易
- 硬水地域はレッドビーの飼育が困難
ざっくりといってしまうと上記のとおりです。
もちろん経験やスキルで硬水地域でも飼育繁殖をうまくされている人もいます^^;
なぜ地域でレッドビーの飼育難易度が変わるのか?
先程のTDSとつながる話なのですが、水道水のTDSが高い場合は「イオン化する物質」がたくさん水に溶けています。
溶けているものはカルシウムやマグネシウムかもしれませんし、それ以外の物質かもしれません。
水道水のミネラル類
- ナトリウム
- カルシウム
- マグネシウム
- カリウム
- 鉄
- ケイ素 …etc
TDSが高いと、必要のない物質がたくさん入っている可能性があります。
そして、それらの成分がどの程度エビに影響を与えるかもわかりません。
軟水地域(TDS低い)はCaやMgがあまり入っていない代わりに、必要の無い物質も少量です。
一方、硬水地域(TDS高い)はCaやMgも入っていますが、必要の無い成分もたくさん入っています。
どちらが安全なレッドビーシュリンプ飼育水を作りやすいかという話です。
TDSと硬水/軟水の目安
- TDS100ppm未満→軟水
- TDS100ppm以上→硬水
TDS高めの地域→RO水での飼育を推奨
硬水…特に水道水のTDSが120を超えるような地域においては、レッドビーが不調となるケースが多発しています。
地域の水が硬水で、このような状況が起こる場合は「RO水」の使用で改善するケースがほとんどです。
RO水とは
RO水とは逆浸透膜(Reverse Osmosis Membrane)という超微細フィルターを通過させた水のことです。
不純物はもちろん、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分まで除去されています。
ちなみにRO水のTDSは「0」です。
このRO水にミネラル剤を添加することで不純物の無いエビに安全な水を作ることが出来ます。
RO浄水器
RO水のハードル
RO水のメリットは計り知れないのですが、導入のハードルが非常に大きいのが難点です。
RO水のハードル
- 浄水器自体が高い(40,000円前後)
- 水道代がかかる
- 時間がかかる
さっとあげるだけでもこのとおりです。
RO浄水器の特性上、不純物を含んだ水を排水しながらRO水を作るため、通常の浄水器に比べると多くの水を使用します。
そのため、水道代が通常の浄水器より高くなります。
また、1時間で数十LのRO水しか作れません。
※別途ポンプを導入することで浄水速度を早めることは出来ます。
加圧ポンプ単品
加圧ポンプセット品
メモ
RO水を手に入れたい…けれどRO浄水器まではちょっと…という方に、一応裏技的なRO水の入手方法があります。
スーパーやドラッグストアで空の専用ペットボトルを一度購入すると、いつでも備え付けの機械から純水を専用ボトルに入れることが出来るサービスがあります。
この機械から出る純粋は「RO水」です。水槽1台〜2台ぐらいならこのサービスを利用してもいいかもしれません。
※一部アルカリイオン水がでる機械もありますのでご注意ください。エビ☆になります。
RO水の運用と注意
必要なときに蛇口をひねるというよりは予めポリタンクや飼育水用の水槽に汲み置きしておく運用になります。
注意点としては、そのまま置いておくと空気中のCO2を始め様々な物質がRO水中に溶けてしまいます。
速やかにミネラル剤を添加しておきポリタンクに汲み置きしておくことが必要です。
また、ポリタンクの水はエアレーションなどで動かしておかなければ、嫌気性細菌などが繁殖し、水質の悪化に繋がりますのでご注意ください。
レッドビーシュリンプの飼育水作り|①カルキ抜きの方法
レッドビーシュリンプの飼育水を作る手順は簡単です。
「水道水のカルキを抜く→ミネラルを添加する→水温を合わせて水槽に滴下」このような流れです。
このとき、カルキ抜きの方法としては次の方法があります。
カルキ抜き方法
- アクアリウム用カルキ抜き剤で塩素中和
- アクアリウム用浄水器で塩素除去
- エアレーションで曝気し塩素除去
- 活性炭で塩素を吸着除去
1.アクアリウム用のカルキ抜き剤で塩素を中和
熱帯魚飼育を行う際、最もポピュラーな方法です。
ただ、この方法は本気でレッドビーシュリンプの飼育を考える方にはあまりオススメ出来ません。
なぜかというと、この方法は塩素を「除去」ではなく「中和」しているからです。
つまり、塩素(Cl)はカルキ抜き剤と反応し、弱害化された別の物質として水中に残っているのです。
ある程度の水質変化に対応できる熱帯魚に比べるとレッドビーシュリンプは水質に非常に敏感です。
そのため、このほぼ弱害化された物質の影響を受けて調子を崩してしまう可能性も否定できないということです。
※カルキ抜き剤で上手く飼育できている方は特に気にする必要はありません^^;
塩素とカルキ抜き剤の反応
カルキ抜き剤の成分「チオ硫酸ナトリウム」が水と塩素と反応し…塩化水素(塩酸)と硫化水素(硫酸)が発生します。
この新たに発生した成分は、ごくごく微量なため、ほぼ魚飼育において影響が無いと言われています。(もちろんPHを低下させることもありません)
反応式は以下のとおりです。
4Cl2+5H2O+Na2S2O3 → 8HCl+H2SO4 +Na2SO4
[塩素] [水] [チオ硫酸Na] [塩酸] [硫酸] [硫酸Na]
2.アクアリウム用浄水器で塩素除去
レッドビーシュリンプを本気で飼育、繁殖したいという方にはこの方法が一番オススメです。
浄水器のフィルターを通すことで、完全に塩素を除去することが出来ます。
中和ではないので、塩素は水中から完全に取り除かれます。
3.エアレーションで曝気し塩素除去
水道水をバケツなどに汲み置きし、エアレーションをかけることで徐々に塩素を抜いていく方法です。
場所と時間がかかるので全くオススメしません(笑)
その他にはバケツに汲み置きした水道水を日光(紫外線)に当てて塩素を分解する方法も同じようなものですね。
何れにしても除去できたタイミングの見極めなども含めて手間がかかりすぎます。
4.活性炭で塩素を吸着除去
バケツに汲み置きした水の中に活性炭をセットした水中フィルターをいれ、水回しをすることで、数時間ほどで塩素を吸着除去することが出来ます。
安全性については、浄水器を使用したものと同等かそれ以上ですが、こちらも場所と時間をとるためあまり現実的ではありません。
4つの方法を見ていきましたが、レッドビーシュリンプを本気で飼育しようと思っている方は「アクア用浄水器」を使用してカルキ抜きを行いましょう。
蛇口をひねるとカルキが抜かれた水が出てくるのは管理していく上でも非常に楽ちんです。
筆者が使用しているアクア用浄水器
「マーフィード 浄水器 シュリンプスタンダード」を使用しています。
通常版のフィルターに比べシュリンプ用の方がより細かい成分まで除去出来るようです。
ちなみに、通常版のマーフィードのスタンダートまたはスタンダードネオでも別段問題ないかと思います。
また、通常版も中のフィルターだけシュリンプ専用に交換することも出来ます。
設置場所は洗面所の洗濯機の上。
洗濯機から専用分水栓「タカギ 全自動洗濯機から散水用に分水」を使用して写真のように浄水器を設置しました。
レッドビーシュリンプの飼育水作り|②ミネラル添加
飼育水づくりの2つ目の工程です。
「水道水のカルキを抜く→ミネラルを添加する→水温を合わせて水槽に滴下」
ミネラル添加量の目安
ミネラル添加前のTDSによりますが、TDS80〜100程度になるようにミネラルを添加していきます。
この状態で硬度を測定すると4°d前後になるはずです。
タイガー系やシャドー系などのエビの種類によっては+20ほどTDSが高くなるようにミネラルを添加が推奨されています。
私の場合は、特にレッドビーシュリンプとフィッシュボーン、タイガービーで添加量は変えていません。
※RO水の場合はTDSが40〜60程度になるように添加していきます。
ちょっと一言
私自身、水道水のTDS30とかなり低い地域に住んでいます。そのため、水道水のTDSが100オーバーの場合のミネラルの添加量については実体験をもとに説明することが出来ません。
お住まいの地域にあるシュリンプショップにご確認頂ますよう、お願いいたします。
ちなみに、水道水のTDSが100オーバー、水槽の水が200オーバーで上手くエビを飼育されている方もいます。
筆者が使用しているミネラル剤(オススメ)
錦えび パワーバランスミネラル
行きつけの専門店で使用しているミネラル剤です。(専門店…錦えびさんではありません^^;)
Ca、Mgだけでなくエビの成長に必要なビタミンや鉄分なども含まれています。
これに変えてからエビたちの調子がいいです。
プッシュ式なので添加も簡単で、リピートしています(*^^*)
筆者が使用しているTDS測定器
TDSめーたー 水温計機能付き(ウォーターエンジニアリング)を使用しています。
約2,000円前後です。
ウォーターエンジニアリングの三井社長の水質に対する話を動画で見てからこのメーカーのファンになりました。
購入理由はそれだけです^^;
レッドビーシュリンプの飼育水作り|③温度合わせ
レッドビーシュリンプに出来る限り水温の変化を与えないために、水槽の水温と同じ温度まで合わせてから換水や足し水をしましょう。
冬はヒーターで適温(20℃〜25℃)まであげ、夏はエアコンの効いた室温でしばらく放置してください。
上記以外の方法としては、一気に水を入れるのではなく、エアチューブやコック付きバケツを使って点滴法でゆっくりと入れても水温の変化を少なくすることが出来ます。
レッドビーシュリンプ飼育水の汲み置き保管方法
水は常にゆらゆらと動かして水中に酸素を送らなければ腐ってしまいます。
ですので、1日以上の汲み置きを行う場合は、最低限エアレーションを行う必要があります。
水が腐るとは
水中には空気中から入り込んだ好気性バクテリアや嫌気性バクテリアが存在しています。
好気性バクテリアは水中の酸素を取り込むことで活動しています。
汲み置きした最初のうちは水中の酸素が十分にあるため、好気性バクテリアが正常に活動出来るのですが、次第に水中の酸素が消費されなくなっていきます。
この状態になると嫌気性バクテリアの活動が活発化し、硫化水素などのガスを発生させるようになります。これがよく言われる水が腐った状態です。
飼育水の汲み置きに必要なもの
汲み置きに必要なものは次のとおりです。
ポイント
- ポリタンク
- スポンジフィルター
- エアチューブ&エアポンプ
- ヒーター(冬季のみ)
ポリタンクはバケツでもかまいませんが、ブクブクと水面で発生する泡が弾けて回りが濡れてしまいます。バケツの場合は蓋があるものが望ましいです。
飼育水ストック45Lゴミ箱
上記写真のような状態で管理していると、調整済みの水をすぐに使えるので、非常に管理が楽になります。
材料
- ゴミ箱またはポリタンク
- アクリル板(ゴミ箱の場合のみ埃よけとして)
- ホース
- バスポンプ
- 水槽用ヒーター
- 水作エイトコア
- エアポンプ
- エアチューブ
レッドビーシュリンプの飼育水|まとめ
今まで自分が調べたり経験した内容をまじえてレッドビーシュリンプの飼育水について説明してきました。
まとめると以下のとおりです。
ポイント
- PH:6〜6.5(足し水や換水の水は7前後でもOK)
- GH:4°d前後
- 地域により水質が異なり飼育難易度が変わる
- 硬度が高い地域はRO水の使用を推奨する
- カルキ抜きはアクア用浄水器がオススメ
- ミネラル添加はTDSを測定しながら
- ポリタンクで飼育水を汲み置き管理すると便利