レッドビーシュリンプ飼育にバクテリア剤は必要?

レッドビーシュリンプの調子が悪い時、ついついバクテリア剤に頼りたくなりますよね。

なんとなくお守りのような使い方をする方もいるかと思います。

当記事ではレッドビーシュリンプ飼育においてバクテリア剤は必要なの?バクテリアの効果って本当にあるの?という疑問を詳しく解説していきます

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レッドビーシュリンプ飼育にバクテリア剤の添加は必要か?はじめに結論!

結論を言ってしまうと、レッドビーシュリンプ飼育においてバクテリア剤の添加は必須ではありません。

現在、筆者自身はバクテリア剤を全く入れずに、1000匹以上のエビを管理しています。何の問題もなく元気に餌に集まり、抱卵し、子孫を残してくれています。

ただし、目的によっては使用した方が良い結果となることもあります。バクテリア剤とはどのようなものか?しっかりと理解し、上手く活用しましょう!

バクテリア剤の役割と種類

バクテリア剤の話に入る前に、一度バクテリアについておさらいしましょう。

バクテリアは水槽内の餌の食べ残しや糞尿など、放っておくと生体に悪影響を及ぼす有害な物質を分解して無害化する働きを担っています

バクテリアの働き

バクテリアは水槽内の有害な物質を無害化する働きを担っています。具体的に説明します。

水槽内の餌の食べ残しや糞尿、ソイルから出る栄養分などを総称して有機物と呼びます。これら有機物を有機物分解菌がアンモニアに分解するところからスタートします。

アンモニアは硝化菌の働きにより亜硝酸塩→硝酸塩の順に無害化されていきます。硝酸塩は水草の栄養分として吸収されたり、飼育者が換水することで水槽から取り除かれます。

バクテリアがいないと糞尿が分解されないため、水中の有害物質が蓄積し、生体が生き続けることができません。

バクテリアは水槽環境において非常に重要な存在です。

バクテリア剤の種類

バクテリア剤は大きく2つの種類に分けられます。一つは有機物分解菌が入ったバクテリア剤です。二つ目は硝化菌が入ったバクテリア剤です。

市販されているバクテリア剤のほとんどは有機物分解菌が入ったバクテリアです。メダカを飼育している人ならよく耳にするPSB(光合成細菌)も広い意味で有機物分解菌にあたります。

バクテリア剤(有機物分解菌)

有機物分解菌の入ったバクテリア剤は有機物をアンモニアに変える役割を担います。

特徴は、茶色や赤い見た目で割と臭いです…。菌が餓死しないように液体内には培基(バクテリアの餌)がたくさん入っています。

市販されている以下のような商品は基本的に有機物分解菌と理解いただければと思います。

  • ブラックマテリア(姫えびす)
  • バクターワン(ローキーズ)
  • シマテックPSB

水槽内のバクテリアによる分解の流れは有機物→アンモニア(アンモニウムイオン)→亜硝酸塩→硝酸塩の順です。

バクテリア剤(有機物分解菌)を入れることで有機物からアンモニアへ分解する働きを活性化します

有機物分解菌が少ない状態で餌をたくさんあげると水槽内の有機物濃度が上がります。有機物濃度が高いとエビの動きが重くなり、じっと動かなくなったり、最悪の場合は体力が減り⭐︎になってしまいます。

バクテリア剤(有機物分解菌)を補うことで、分解のスタート地点である有機物→アンモニアへの分解を促進することができます。

有機物分解菌は空気中に漂っているため、バクテリア剤(有機物分解菌)を入れなくても分解のサイクルは始まります。ただし、空気中からだとバクテリアの量が少ないため、きちんと働くだけの量が水槽内で増殖するには時間がかかります。

バクテリア剤(硝化菌)

硝化菌は有機物分解菌と違い、長く容器に留めておくことが難しいバクテリアです。そのため、硝化菌の入ったバクテリア剤は限られています。

現在、唯一硝化菌の入ったバクテリア剤はバイコムです。実績もありアクアリストの間でも非常に有名な商品です。

硝化菌はニトロソモナスとニトロバクターの2種類が存在します。アンモニアを亜硝酸塩に分解するのがニトロソモナス。亜硝酸塩を硝酸塩に分解するのがニトロバクターです。

バイコムのバクテリア剤にはこれら2種類が入っています。


硝化菌も空気中に存在するので、バクテリア剤(硝化菌)は必須ではありません。少しでも早く立ち上げる効果を期待して使用する形となります。

バクテリア剤の活用方法

冒頭でバクテリア剤は”必須ではない”とお伝えしましたが、目的に応じて使用することで有効活用することも可能です。

バクテリア剤を有効活用すべきシーンとしては以下の2つがあります。

  1. 水槽を早く立ち上げたい時
  2. 稚エビの生存率を上げたい場合

と…ここまで読んで、バクテリア剤でエビの不調は解決しないの?と疑問を持たれた方もいるかもしれません。

この記事で伝えたい内容がまさにソコです。

よく「不調対策にバクテリア」と言われますが、バクテリアを入れたからといって問題が解決することは非常に稀です。この辺りも当記事にて順番に解説していきます。

①バクテリア剤の活用(水槽の早期立ち上げ)

何度も繰り返しになりますが、水槽立ち上げとは、「有機物→アンモニア→亜硝酸塩→硝酸塩」の順にバクテリアの働きにより分解が進み、糞や残餌を最終的に害の少ない硝酸塩に分解する流れをさします。(これを硝化サイクルの構築と言います)

厳密には、硝化サイクル構築の後、硝酸塩を肥料とした水草の成長、植物プランクトンの繁殖→動物プランクトンの繁殖→ケンミジンコなど目視できるサイズの微生物の繁殖を経て、エビの餌が豊富な良い水槽環境が徐々に整っていきます。

硝化サイクル構築の期間は約1ヶ月〜2ヶ月ほどです。

 

硝化サイクル構築までの期間を決める要因

  • ソイルの使用量
  • ソイルの種類(栄養の多さ)

 

ソイルの量が多いほど、栄養が豊富なほど立ち上げに期間がかかります。その後、エビの餌が豊富な環境がになるまでにさらに1〜2週間ほどの期間がかかります。

エビ
良い水槽環境を作るまでには約1.5ヶ月〜2.5ヶ月ほどかかるんだね

この立ち上げ期間のうち、「硝化サイクル構築までの期間」を少しでも短くするためにバクテリア剤を活用することができます。

メモ

既に立ち上げ済みの調子の良い水槽がある場合は、市販のバクテリア剤の代わりに、ソイルやフィルターを流用しても問題ありません。(むしろその方が立ち上げ時間の短縮効果は高いです。)

調子の良い水槽の飼育水を流用する方もいらっしゃると思いますが、筆者の経験的に(効果大)>フィルター>ソイル>飼育水>(効果小)の順で効果実感が現れます

※フィルターを使用する際は調子の良い水槽に数週間あらかじめ仕込んでバクテリアを定着させておきましょう。

参考記事

コレだけでOK!失敗しないレッドビーシュリンプ水槽の立ち上げ方

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立ち上げ速度を早めるためのおすすめバクテリア剤

立ち上げを早めるためには有機物分解菌と硝化菌の両方のバクテリア剤を使用しましょう

オススメのバクテリア剤

  • スーパーバイコム78(硝化菌)
  • スーパーバイコム21(有機物分解菌)


なぜ上記のバクテリア剤をオススメするかというと、市販で唯一の硝化菌が入ったバクテリア剤を作っているメーカーだからです。また、実績もあり、筆者自身も効果実感が高かった点も理由の一つです。

立ち上げで使用する場合は、セットになったスターターキットがオススメです♪ スーパーバイコムには使用期限がありますので使い切れる量のものを選択しましょう。

メーカー説明としては継続使用することで水質が安定すると記載されていますが、エビ水槽の立ち上げを早める目的においては硝化サイクルが完成した段階で使用を中止して問題ありません。

もちろん、価格が問題なければ継続しても良いのです。

エビ
エビ専用のバクテリア剤でなくても全然OK!

②稚エビの生存率を上げるためのバクテリア剤の活用

ここではバクテリア剤を稚エビの餌として活用する方法を解説していきます。

使用するバクテリア剤は有機物分解菌の入ったバクテリア剤です。通常、バクテリア剤にはバクテリアが餓死しないように菌と餌(有機物)がセットで入っています。

バクテリア剤が稚エビの餌になるの?

バクテリア自身が直接的に稚エビの餌になるというよりは、微生物(ワムシなど)の餌になります。これら増えた微生物をツマツマと稚エビが食べるという流れです。

バクテリア剤で稚エビの餌となる微生物を間接的に増やすというイメージです。

(参考)メダカ飼育におけるバクテリア剤の活用

メダカの稚魚育成においてもこの手法が取り入れられています。

具体的には光合成細菌PSBを使ってゾウリムシを繁殖させ、そのゾウリムシをメダカの稚魚に与えるという方法です。

筆者自身、PSBで培養してみると1〜2日で大量のゾウリムシが増殖しました。そのゾウリムシをメダカの稚魚(針子)に与えると、成長速度と生存率が飛躍的に上がりました。(ほぼ死ななくなります)

この経験で、バクテリア剤が微生物の増殖にかなり効果的であると筆者自身改めて認識しました。

バクテリア剤を稚エビの餌として活用する具体的なケース

本来であれば立ち上げから水槽環境を整えて、エビの餌となる微生物を大量に繁殖させ、稚エビにとって餌の豊富な環境を作るのが理想系です。

しかし、過密での飼育や多数の親エビと稚エビを同居させて飼育するケースもあるかと思います。

このような場合、水槽で増える微生物の量に対してエビが食べる微生物の量の方が多くなり、稚エビに餌が行き渡らない可能性が出てきます

…とはいえ、通常の粉餌や固形餌をたくさん与えてしまうと、水槽内の分解サイクルが追いつかずに水が汚染されてしまいます。(有機物濃度が上がってしまいます。)

そこで、水質をできる限り悪化させず水槽内の微生物の数を増やす方法としてバクテリア剤を活用することができます

微生物を増やす際におすすめのバクテリア剤はPSBです。


PSBでワムシやゾウリムシをしっかりと増殖させることができます。

エビ
ぜひ試してみてね♪

バクテリア剤では不調は解決しない?

特にバクテリア剤を使いたいな!と思うタイミングはいつですか?

水槽が不調になりエビが隠れてしまったり、ポツポツと⭐︎になる時ではないでしょうか?

そこで気になるのはバクテリア剤でエビの不調は改善されるかどうかです。この辺りを掘り下げて解説していきます。

結論:バクテリア剤では不調は解決しない

少々過激な言い回しですが…

エビの不調はバクテリア剤でほとんどの場合、解決しないと考えています。

筆者自身もエビを飼育しはじめた時、何度も不調な状態に陥り、バクテリア剤を購入して水槽内に投入しましたが、数週間経ってもなかなか効果実感はできませんでした。

当初の経験を改めて考えてみるとエビの不調の原因が様々だからです。一つ一つの原因を捉え、対処を繰り返さなければ解決に導くことは困難と考えます。

立ち上げ初期の不調の場合

エビ水槽が完全に立ち上がっていない状態でレッドビーシュリンプを入れると、奥に隠れてじっとして動かない不調な状態になってしまいます。

この状態は、ある程度はバクテリアが増えているもののバクテリアの量が十分ではないケースや有機物濃度が高くエビの動きが重くなっていると推察されます

立ち上げから1ヶ月弱経過していると、バクテリア自体は一定量はいるので、バクテリア剤で多少バクテリアの量を増やしたところで、立ち上げ期間は実感できるほど早まりません。

また、バクテリア剤の組成はバクテリア+バクテリアの餌(有機物)から成り立っています。

有機物濃度を下げようとして有機物分解菌が入っているバクテリア剤を入れると、バクテリアも有機物も増やすことになってしまいます。

このように、立ち上げ初期の不調に対してバクテリア剤を加えても、実際のところあまり効果が期待できません。

バクテリア剤を入れた直後はエビがツマツマと動く場合がありますが、根本的な解決ではなく、餌的な何が水槽内に入り一瞬ざわつくだけです

エビが動くからといってバクテリア剤をたくさん入れたり、何回も入れると余計調子が悪化することがありますのでご注意下さい。

立ち上げ期間経過後の不調の場合

立ち上げ期間が経過後の不調はバクテリア以外が原因であることがほとんどです。

例えば以下のような原因が考えられます。

  • ソイルの寿命による水槽内の微生物(餌)の減少
  • ソイル下の通水性低下
  • 餌の与えすぎによる有機物濃度の上昇

何れの場合もバクテリアの量は問題ないケースが多いため、バクテリア剤を入れてもあまり改善効果は期待できません。

不調時における例外的な活用方法

エビの餌として使用する方法です。エビの調子を改善するためにバクテリア剤を使用するわけではありません。

先述した、稚エビの生存率を上げるために餌(微生物)を増やす方法と同じ考えです。

不調のエビ水槽においては1週単位で餌を抜きつつ換水する方法が効果的です。そのような場合でも少量のバクテリア剤であれば粉餌や固形餌よりも水を汚さずに微生物に栄養を与えることができます。

不調の場合は粉餌や固形餌を一時停止して、バクテリア剤を餌として代用するのも手段の一つです。

参考記事

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まとめ

  • レッドビーシュリンプ飼育においてバクテリア剤は必須ではない
  • バクテリア剤は有機物分解菌と硝化菌が入った2種類がある
  • 硝化菌の入ったバクテリア剤はスーパーバイコム78のみ
  • バクテリア剤の活用方法には「立ち上げ期間短縮」「稚エビの生存率向上」の2つがある
  • バクテリア剤を入れてもエビの不調は基本的に解決しない

この記事で一番伝えたいことは、バクテリア剤はエビ水槽の不調を改善する万能薬ではないということです

不調には不調となる原因があります。中には複雑に原因が絡み合いなかなか捉えることができないケースも多数存在します。

不調の原因について、自分自身がおこなった行動を一つ一つ振り返り、仮説→検証を繰り返すことで改善パターンを見つける必要があります。

エビを長く飼育している方々はこれらの仮説→検証を何度も繰り返し、自身の経験値として蓄積しています。(たくさん失敗もしています)

真剣にエビ飼育を楽しみたいなら、数回の失敗で諦めるのではなく、なぜ今回失敗したのか?をいろんな視点で考えてみると良いかもしれません。

少し硬い話になりましたが、エビ飼育は本当に楽しい趣味です。

当記事が皆様のシュリンプライフに貢献できると幸いです。

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